ビデオの裏側 「過去の記事庫」
こちらでは、過去の記事を収めています。
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現代のラグタイムと野球選手へ捧げる想いと情景 - 「ロベルト・クレメンテ」
はじめに - いかにして、このチャレンジを始めるに到ったか
この美しいラグタイム作品の作曲者である デヴィッド・トーマス・ロバーツ (以下、DTR) について、実はあまり詳しくないと先に申し上げておきます... ですので、彼に関する情報は、過去に日本へ招聘もされたラグタイム・ギター界の「巨匠」である 浜田隆史さんのツアーレポート やサイトを是非ご一読ください。
そんな私に、DTRの音楽を初めに紹介してくれたのは、当地のラグタイム・ファン(マニア) 室町さん で、常々「編曲しないんですか?」という要望なども頂きつつ楽譜も見せてもらったりしていたのですが、楽譜と曲を照らしながら確認した印象としては「私の流儀でやろうとすると、難易度高すぎだなぁ」... ということで、長らくためらっており - ですが 「ラグタイムファンとしてもギタリストとしても、死ぬまでに1度はチャレンジしなければならない作曲家」 であると、心中密かに感じていたのも事実でした。
そんなある日、私のタブ譜を欲しいとお問合せ頂いた知人が 「DTRの“ロベルト・クレメンテ”が大好きなのですが、いつか編曲する予定は無いですか?」 と、楽譜のコピーを(参考に)送ってくれました。「なかなか難しいので」と返事を差し上げつつも、どんなもんかなぁ?と楽譜を仔細に眺めたところ... 「できるかもしれない... いや、ギターにマッチしつつ、ギターならではの美しさをかもし出せる作品になるかも?」 - ということで、早速に取り掛かると同時に、DTR本人に楽譜集を正式オーダーしたのでありました... ;-)
アレンジ
[註] 採り上げた楽譜は、本稿の理解を深める目的にのみ使用しています。
[fig. 1-a]
基本的な楽曲構造
基本的な構成を鑑みるに、この曲は "多声構造のラグタイム" とでも位置づけられましょうか - いくつかの声部が完璧なハーモニーを作りながら流れていくのが楽譜からもお分かり頂けると思います。しかしながら、このハーモニーが "シンコペーション" という「時間」のずれによって、“一瞬の不協和音” ともいうべき 「空間」 を作っているのもまた事実であり... 個人的には、この「リズムと和声の違和空間」そのものが、クラシックとジャズの橋渡しとも言うべき「ラグタイムそのものの魅力」であり「適度な通俗性」なのではないか?と思っているのですが ※その点からすると、ジャズの前景というよりも「(シンコペーションが当たり前=通俗な)ポピュラーミュージックのはしり」というイメージの方がラグタイムの音楽史的な位置づけとしては正確なのではないか?とも思うのです...
何にしても、内声がメロディに寄り添うように流れていく様がご覧頂けると思いますが [A]、2小節目からは(完璧な相似形でなく)つつましやかな寄り添いに変化し [A'] 同時に、印象的な下降ラインを演出し始めますが、「レ→ド→シ」と下がる最後の「シ」の音が、内声でなく “メロディ” に置き換わっているという芸の細かさ... もちろんこれらは「自然に作曲」されたのでしょうが、ひょっとすると「楽譜に書くことで意識フィードバックされ書き加えた」のかもしれません。というのは、彼の作曲「書法」が、文字通り「書き物として美しく」仕上げられているからなのですが... ※元気があったら本人に聞いてみます - ここで突っ込むには余りに「ソシュール的」なので(苦笑)。ちなみに同じコトを常々“ジョプリンに”聞いてみたいと思っていたのですが、それは無理なので...
もちろん、左手のベース&伴奏の重要性も見逃せません - ジョプリンによく見られるようなパターンで始まりますが [B] 、単音ベースのアップする音形が半分のリズムパターンで再び現れ [B'] 同時にそのラインも右手のメロディパートと完璧に調和を見せているのがお分かり頂けるでしょう... ;-)
もし、これらが全て違うキーで作曲されていたら、私もたぶん編曲をあきらめていたでしょうが、実に幸いにも「D」のキーでした - ギターではお馴染みのキーであると同時に、六弦を一音さげてDにするドロップDチューニングが極めて効果的であります... この変則チューニングというのはギターの素晴らしい技のひとつであり、今回もためらい無く採用を決めたのですが、しかしその一方で、上記にみるように作曲家自身が極めて高いレベルの配慮を注入し美しく仕上げた作品だけに、私もいつも以上に気を使って編曲をしなければいけない、と肝に銘じたのでありますが... その成果度合いについて、この章では書いてみたいと思います。
[fig. 1-b]
ギターアレンジ譜
いくつかの変更やあきらめ(?)は含むにせよ、重要なポイントを押さえながら編曲を進めているのがお分かり頂けるかと思います。基本的なスタンスは 既出の章 で書いている内容と同じですので... ここでは、つつましやかながら ギター演奏そのものに関する私見などを書いてみたいと思います... うがっていえば "ギター固有の美" について。
典型的な例として、この曲の冒頭箇所をあげてみたいと思います [D]... 普通ですとこのメロディーは単音(のラインで)弾かれると思いますが、私はあえて "素早い和音" それも "素早い不協和音" として弾いています - わざわざ2弦と3弦を使用した「コード形」にしているのがお分かり頂けるでしょう... このような「和音」を作るには、鍵盤楽器であるピアノの方が比べ物にならない位簡単な訳ですが、音楽的には「そうとも言えない」と感じています - 恐らくピアノだと、交じり合った音が濁り過ぎるだろうと思うので。一方のギターですと、この2~3音は「分散和音=アルペジオ」として弾かれながらも、ギターに固有の「つつましやかな音量や音のアタック、そして(音の)減衰」の効果により、ピアノよりも “聴きやすい不協和音” として仕上げるのが可能だと思われます。
では、何故あえてそのような不協和音を選んだのか... それは、この美しい曲の冒頭が「単純なメロディーの連なり」では(特にギターの場合)面白くない(または、芸が無い?)のでは?と感じたからです - イントロダクションが無いと言うのもポイントかもしれませんし、うがって言えば「この不協和音を印象的なイントロとして扱ってみたかった」という想いが底辺にあるようにも思います - さらに推し進めて言えば、そうすることで「発音時のアタックを引きずることなく、つつましやかに、そして自然に減衰するというギター固有の美」を、この美しいラグタイムの冒頭で “証明” したかったのだとも言えましょうか - ビデオでそれがうまく「実演」できていればイイのですが... ;-) では、次のパラグラフでは「ギター固有の美」に関する “別の事例” を紹介いたします。
[fig. 1-c]
作曲者は、どう取り組むか?
色々あれど "全て別なり" と考えたく候
では、正解はどちら... ?! 最初のがオリジナルと同形ですが、残りを「いかがいたしましょうか?」 - 「たいして違わないよ」「作曲者か演奏者の気まぐれで選ばれてるんじゃない?」「練習用の変奏だね」「作曲過程での思慮深さの現れです」... クラシックラグタイムの 現在形のギター編曲者としては、最後の考え方に殉じてみたいというのが私の流儀(想い)です... が、実際には編曲でも演奏でもこの<分別>を完璧に成し遂げるのはままならないうえ、私自身も「アドリブ」の楽しさと重要性は十分に認識したうえでの意思表明ですから、現実にバランスを取るのは(かなり)難しいです - ただし「オリジナル作品へ敬意を払う」という点は一貫しているつもりですが。
ちなみに言うと、このコンセプトの源流は「ジョプリン作品の編曲というキャリア」に求めることができましょう - 彼がいかに音楽を「書いた」かを精査するのは、編曲作業でのこのうえない楽しみであり、私見ではその真髄が少なからず、作品 『ラグタイムの教科書 スクール・オヴ・ラグタイム』 に書かれているのでは?と思うのですが、実際にはこの風変わりな作品の解釈は定まっていないのでは、と私自身はみなしています (※ あまり大したことは書いていない、という評価が大勢に思えますが、私的に判断すれば 『かくも思慮深い作曲書法を追求するジョプリンが、自費で重要では無い作品を出すだろうか?』とも考えてみたり...)
しかして今回は幸いにも同時代の作品ということで、当方のつつましやかな興味に関するコメントを、作曲者自身が Facebook によせてくれました。せっかくですからご紹介いたします。※事例への解答ではありません。訳出はやや曖昧かも。
そう、ささいなバリエーションは僕のラグタイム作曲法のポイントともいえるところで、特に詩的な作品 - すなわち本質的な楽曲の発展要素を持たない(形式に依存するような)ラグタイムのような作品で主に取るアプローチだね。ショパンもこの手の練習課題を特にワルツやマジョルカで作ったりしてるけど - でも僕にはそれが「作曲の純粋に奥深いところ」から生じているように思えてならないんだ。
再び幸いにも、この最初のピアノ音形は、ほぼ完璧にギター上で再現することができます - タブ譜を見て頂ければ分かるように、2弦と3弦の開放弦が大きな助けになっています [E の緑囲み; fig. 1-b]。しかしながら、あなたが純粋主義者ならばこう指摘するでしょう - 「それならば、伴奏部分の弱起(アップビート)が8分音符になっているところは、4分音符ではなくきちんとミュートして音長(ゲート・タイム)を保つのでしょうな?」 [E の矢印部分; fig. 1-b]。正直に言いますと「私は "チェリー・ピッカー(いいとこ取り屋)" なもので... やったりやらなかったりです~」 ; 多少の言い訳を加えるなら、(不協和音などに到らずに)トータルなサウンドが心地よければ「鳴らしっぱなし」にしておきます - そして正にこの点において、他の「音が大きくよく響く楽器」に比較すると、ギターの特性である『自然に減衰する音がつつましやかに交じり合う音響調和性』が美しく効果を発揮するのではないか?と考えたい訳です - いかがでしょうか... ;-)
[fig. 2]
ギターで自分のテイストを加味;
第2セクションの冒頭
リピート時には実音で弾いてます... お気づきにならないかもしれませんが
... ;-)
(超)長い分析の後は、私個人のテイストを... お得意の "ハーモニクス Harmonics" ;-) 第2セクションに入るブリッジとなっている印象的な音符は、編曲の当初から(ハーモニクスとして)頭の中で鳴っているイメージでした... 一種の病気というかクセというか。一方のベースで使われている方は、私の用語で言うところの “まやかしのベース音” というモノで - すなわち、ベース音がメロディーよりも実際には高い音ながら、低音弦のハーモニクスにすることで「何となく低い印象」を与えようという試みです... さらには、ミュートしない限り開放弦同様に長さを伸ばしつつ自由にフィンガリングが効くという「経済性」もありますし!? ベースラインについては、一方で、オリジナルとは違う「ウォーキング・ライン」をあえて採用し、ステップを踏むような雰囲気を演出してみました... ;-)
[fig. 3]
ハイライト; 第2セクションが終わり、冒頭のセクションが D.S. 的に繰り返されるところ - デヴィッド自身は、(恐らく)繰り返しの際の変奏を忠実に楽譜にしたいという意図から(D.S.を)使っていないのですが。
その「繰り返しの際の変奏」という意図を、私自身のアプローチで再構成したのがコチラです。
英国ギター音楽に造詣のある方なら、思い起こされるかもしれません - ジョン・レンボーンの著名な代表曲 - "世捨て人 The Hermit" - リンクは アマゾン のサンプル MP3 に... ということで、もちろん私はその影響下にあります... ;-)
ここでも再び、メロディーラインの大半をハーモニクスが可能な音で置き換えられるという幸運に恵まれた訳ですが、青い囲みの箇所は弾きやすさを優先してオクターブを下げています... 反対に、赤い囲みの所ではアルペジオを伴った不協和音を意識的に採用し、ちょっと異質な雰囲気をかもし出してみました。
[fig. 4]
もう一つのハイライト; 最後の頂点
リピートの際のバリエーション(指示)はオリジナル楽譜にも忠実に記載されています。違いを丹念にあたるのも今回のミッションの一つで... ;-)
記載の箇所は、私の編曲ギターライフにおける「もう一つのミッション」を示しています - すなわち "ベンド(チョーキング)" を使うこと... ここでは、大変なハイポジションでの運指を簡素化しつつ、一種の切ない "ノスタルジックな" あるいは "サウダーヂな saudade (ブラジル固有の感傷)" 雰囲気を出そうと試みています... そう感じて頂けると嬉しいのですが! なお、ここでもハーモニクスがフィンガリングの省略(音長の維持)に貢献しています。
※緑の矢印は... すみません、付けた意味を余り思い出せていません...
このミッションも、実は再び、ジョン・レンボーンの輝かしいプレイにインスピレーションを受けたものです - "ゴート・アイランド Goat Island" - リンクは再び(アマゾンの)サンプル音源ですが、偶然にもサンプルが消える寸前に、件のチョーキングを聴くことができます! - 実に16歳のときに初めて聴いて以来「いつかは、こういうチョーキングをキメてみたい!」と思っていたその積年の想いを、ついにここで果たすことができました... ;-)
色彩でもトリビュート - ロベルト選手と彼のチームのために
このラグタイムは 著名な米国野球界の殿堂入り選手 に捧げられているのですが、私自身も自分なりにトリビュートしてみようと思っていました... すなわち "ビデオの衣装(?)" で - いつも(それなりに)工夫してるのですが(苦笑)
実は最初に思いついたのは 彼のチーム "ピッツバーグ・パイレーツ" の帽子 を被ろうと思っていたのですが、オールド・クラシックな服装の雰囲気と余りにミスマッチだと思ってあきらめて... その代わり、チームカラーを取り入れることを思いつきました - すなわち "黒と金"で、これなら、ややクールでラグジュアリーな雰囲気を醸せるかなぁ?と考えた次第...
ということで、金のアイテムには「伝統とラグジュアリーの融合」ともいえるフランス・パリの老舗ブランド "シャルベ Charvet" のネクタイをチョイス- とは言うものの、長島アウトレットの "アローズ United Arrows" で「ありえへん安値」にて買ったものですが(苦笑)。小さなピンバッジは ある試験結果 ISTO を示すものですが、私の「さえない経歴・力量」へのトリビュート(フェアウェル?)として着用しました...
ということで... 最後にご関係者(?)の方に謝辞を送りたいと思います; David Thomas Robertsさん、浜田さん、室町さん、内田さん... そして、私のビデオを見た後に、この「飽きるくらい長い」文章を読んでくれた皆様へ!!
ラグタイムの影響下で - "シェリフ The Sheriff by ELP"
はじめに... 少し言い訳を
実のところ、この曲は「ラグタイム」とは言いがたいですね... エンディングで素晴らしいラグタイムピアノが披露されているにしても! しかし、曲を演奏しているロックバンド "ELP" のキース・エマーソン Keith Emerson が、『メープル・リーフ』をライブで披露するほどの古きアメリカ音楽の愛好家でなかったとしたら、このカッコいい曲も生まれなかったのではないでしょうか... ;-)
ということで、双方のジャンルに対する私自身の「愛情」を表す意味からも、キーボードラインを忠実に編曲しながら同時にロック的なパフォーマンス(?)を達成するというミッションを掲げて、今回の収録に取り組みました。
編曲
[註] 採り上げた楽譜は、本稿の理解を深める目的にのみ使用しています。
[図 1-a]
イントロ
(原曲)
オルガンとピアノの多重録音も含んでいますが、ほとんどユニゾンで演奏されていますので単一パート譜のみ掲載しています。一方、このピアノ譜と私のギター譜では異なる音形・表記が出てきますが、その理由は違う楽譜を使って編曲したから - 古い『キーボード・マガジン』を参照 - 比較しづらいかもしれませんが、ご容赦ください。
[図 1-b]
イントロ
(編曲)
メロディをオクターブアップしているのは、すぐにお気づきになるでしょうが、演奏性の向上に加え音自体が生きる(目立つ)ように配慮したつもりです。キーボードのタッチの軽快さを出すべくギター(ネック側)のフィンガーテクニックを加えていますが、ミュートやスタッカートでメロディーをタイトに扱うのは“あえて”止めています; ソロ演奏なので、ある程度音を響かせながら音楽を流してやらないとイケナイので... 私の場合、レイクやパーマーがサポートしてくれませんから!!
[図 2-a]
ソロ部分
(原曲)
[fig. 2-b]
ソロ部分
(編曲)
このソロを弾くのはなかなかに楽しいです~... たとえギターでも ;-) 恐らくキースは「アドリブ」でなく事前に「作曲」して弾いていると思われます - 同じテーマによるライブ演奏を YouTube でチェックしましたので。ということで、トリビュートすべく正確に編曲しようと思う一方で、ギターライクな演奏になるように(実はかなり)音形などを変えています。加えて、ギター独自のテクニック(ハーモニクス、スライド、ビブラート等)も加えましたが... チョーキングだけは入れなかったですね - うーん、頑張ればどっかに使えたかもしれません!
(奇特な)読者の方への特別に、上記の抜粋楽譜を用意しました... 楽しんでみてください!
* 無料ダウンロードは右のアイコンから (PDF 100KB); Copyright of arrangement is reserved.
パフォーマンス... “お独りさまバンド” として
新しいチャレンジ "歌いながら演奏" - 実際は、録音と録画、アクションもありますが?! ELPの中で特に好きな作品なのに、30年以上経っても適当な歌詞で歌ってます - 英語圏の人が聞いたら「?」でしょうね... もし私の歌が「英語」に聞こえれば、ですが(苦笑)。
使用したギターは、まさに人生初の(まともな)エレキギター - 30年以上、所有していますが、亡父が買ってくれたモノです - それまでは「おもちゃ」みたいなエレキでずーっと練習してたので!メーカーは "トーカイ Tokai" - お手ごろ価格の「そっくりコピーモデル」というので、当時は人気がありました - 定価6万円(ケースはサービス;by 大田店長@山野楽器札幌そごう店; who is 片手一振りで3連スネア叩く人)。
ジーンズ上下着用もトリビュートですが、キース本人のように「素肌に直接」は止めました; 赤いT-シャツには、モーツアルトの楽譜が印刷されているんですが、見えないよね...
ということで... どこかここか、お楽しみ頂ければ幸いです。
現代のラグタイム "Peck Peck Song" & "Mimi"
はじめに... 謝辞
最新投稿の2曲は、現在でも作曲されているラグタイムの例、でもあります。しかしどちらの曲にも各々のテイストが加味されているため、特段にラグタイムであるとは意識されずに済んでしまうとも思われますが、しかしラグタイム無しにはこれらの曲もこういう形にはなっていないだろう、という気がいたします。
これらのユニークで楽しい楽曲をアレンジ・発表させて頂いたことに対し、作曲者のお二人に感謝をいたしますと同時に、ここに解説めいたことを書かせて頂くことをご了解くださいませ... OK?
なお、ご両名の Facebook は以下になります。
It's Jerry Time!
Bob Milne
"The Peck-Peck Song"
エミー賞受賞アニメのBGM... ですが、彼が作曲録音しています。さらっと聞くと「カートゥーン・ソング」ですが、やはりラグタイムを背景にした曲になっており、私もその辺りに配慮しながら「自分のテイスト」を加えさせて頂きました。
曲を聴いて頂いてもわかるように「シンプル」な和音構成なので通常のチューニングで編曲を進めましたが、作曲者から頂いた楽譜には「ピアノソロ」があります - 逆に言うと、このメロディは「歌」として考えて頂いたほうが良いのですが。
このソロは途中でマイナー調に変化しているのですが、ピアノ楽譜だと単純にブレイクして主題へと戻る格好になっていました。
しかし歌がないとその間の「差異感」が薄れてしまうので、「何か自分のテイストで変化を加えたい...」と考えたのが左のブリッジです。
“メープル・リーフ Maple Leaf” に代表されるようなディミニッシュ・コードの上昇フレーズを加えた後に、最後はよくあるリズムパターンで主題へ戻しています。この戻す和音も色々やってみた結果、これが一番ナチュラルな雰囲気だったで決めましたが... いかがですか?
"Mimi"
流れるような和音のメロディが印象的な冒頭のテーマ部分です。とにかくココが軽やかに弾ける様に... との思いがありましたので、『エンターテイナー The Entertainer』でも採り上げた(変態?)Cチューニングを使用しています。ところどころ入るAフラットがメランコリー調を巧みにかもし出していて、ここに ラグタイムの真骨頂 があると思うのですが、いかがですか?そういえば『エンターテイナー』でも第二楽節の中で同様のキメがありますが... 分かりますかね ;-)
第三楽節からは「ブギウギ」っぽい曲調へ移りますが、メロディが高音から低音に移るところがカッコイイですよね... しかし、こういう低音ラインは弦が6本しかないギターだとなかなか難しいモノがあります - ここでは高音の和音を軽く織り交ぜて「単音のみの薄い音」にならないように配慮してみました。
ちなみに原曲と同調のCアレンジなのに カポを使っている のは(私のアレンジ・ガイドラインに反しますが!)、このフレーズが重たくなりすぎないように、との配慮です。 ※元々ギターはピアノよりも実音が低いので... 2フレに装着しないのが、フラット系を好むラグタイマーの特徴でしょうか(笑)
Clothes
たまには“衣装”の解説も... ユナイテッド・アローズ・グリーン・レーベルのコットン・ジャケットですが、チェンジポケットがやや英国調の仕様でしょうか? コットン・ジャケットは「夏用」と言われたりしますが、暑いうえにこの色調だと、今が旬です... 名古屋だともうキツイですが(苦笑)
本来はカジュアル向けの製品と思われますが(勝手に)オフィシャルでも着ています... Japan Biz シーンでは(やや)在り得ない Rare な装いですが(?)ネクタイを締めていない人に Dress Code でケチをつけて頂きたくない、というのが Credo なので... ;-)
"サムシング・ドゥーイング Something Doing"
作曲:スコット・ジョプリン&スコット・ヘイデン Scott Joplin & Scott Hayden (1903)
はじめに... もう一人のスコットについて
ジョプリンはラグタイムの作曲において、いわゆる“弟子”(生徒)といわれる人と共作を残しているのですが、これはその中の1曲です
- 相方の作曲者 ヘイデンについては "Perfessor" Bill Edwardsのサイトをご覧下さい。
この曲を初めて聴いたのは、ラッセ・ヨハンソン Lasse Johansson によるギター・デュオの編曲でした。最近は 彼のサイト でも、フィンガーピッキングやラグタイムの編曲をダウンロードできたりもします... ぜひチェックしてみましょう!
彼はどう書いた? - 私はどう書くべき?
最初にこのラグを編曲したのは 2001年でしたが、当時は「そんなに難しくない曲」程度の印象くらいしか持っていませんでした。それから10年以上経ち、改めてこの曲を次の「投稿用」と決めたのも、その印象からなのですが、最近の習慣に基づいて「アレンジを改定」すべく詳細を見直し始めますと... 作曲者 - おそらくジョプリンの方 - が、 作曲:音楽を記述することにいかなる注意を払っていたか を示す痕跡を見るに至りました... と同時に その意図を汲み上げるような編曲ができるか を今回の自分のテーマにもしてみたつもりなので、その辺りを書いてみます。
最初のセクションで 主題を構成するこのフレーズは3回出てくるのですが、左の例にあるように細かい部分で異なる表記・曲想が見られます ; しかしながら、左側の記載を一人(の人の左手)で記述どおりに演奏するのはさすがに無理に思えます... ファッツ・ウォーラー Fats Waller だったら可能かもしれませんが ※「バナナ1房くらい手が大きかったらしいよ」とファンの人が教えてくれました!
この例から推測されるのは、ジョプリンが恐らく自らの作品を「実演から切り離されたイメージ上の理想的な音楽」として 捉え、かつ記述していた のではないか?という仮説です - あたかもバッハのリュート作品のように。なお、書籍 "King of Ragtime" (バーリン氏 Edward Berlin)の中には、彼が "ピアノに向かって at the piano" というより "紙の上で on paper" 作曲していた、というコメントが紹介されています。(引用: p103)
この原曲の差異をギターで再現するのはなかなか難しいのですが - 撥弦と自然減衰というギターの特性から考えれば、実は原理的にはピアノよりも簡単なのですが - やや拡大解釈ながら "演奏上のバリエーション Playing Variation" として、リズムや音をアドリブで変えるような感覚性を取り込むイメージに置き換えてみました。
とは言うものの、YouTube での演奏では、自分が記述した通りには弾けていませんね... 文字通り「気の向くままのアドリブ」として弾いてしまっています。(つっかえながらですが...苦笑)
こちらは 別の例 で、第4楽節からです。私にはジョプリンの嗜好と作曲に対する姿勢感が現れているように思えますが - "前進する Marching Onward" ために、何か新しいことを SOMETHING NEW DOING を取り入れていくという... ;-) とにかく「単純な繰り返しを嫌い、向上に向けた変化を求める」人だったのではないでしょうか? - 1曲の中でも、人生においても...
幸せのノック With a little luck に支えられて(?)、ここではフィンガーテクニックで対応が可能でした - "ハマリング・オン Hammering On" を "スラー Slur" に置き換えています。実際に弾いてみると、このニュアンスの違いはなかなか面白いのですが、またしてもビデオ実演では「気まぐれ」にパターンを使い分ける格好になっています...
不確かな仮説 - ジョプリンは出版社に何を望んでいたのか?
最後の事例は単純な「浄書ミス」を示しているだけなのかもしれませんが、時に私は「ジョプリンの人生における永遠の謎」のひとつに、それが絡んでいるようにも思えるのです - すなわち「なぜ彼は出版社をしばし繁盛に変えていたのか?」という点に。
左が原曲譜で右が私の編曲です ; やはりこのB音には、フラット記載が必要ではないでしょうか? もちろん、これがミスだとした際に、その原因がどちらの側 - すなわち、作曲家か出版社のどちらにあるかは、誰にも分からないのですが、ダブルフラット表記を音楽理論の立場から正確に記載する力量をもつ作曲家が、このようなイージーミスをするとは考えにくい気がするのですが...?
そして仮に出版社の「浄書ミス」だったとしたなら、「印刷楽譜」が今で言う「ストリーム」的な音楽配布の唯一のメディアだった時代にあって「自らの音楽性の欠如」とも捕らえられてしまうような過ちを、作曲家自身は許すことができたでしょうか - 特に彼が "何か違ったアイディアを創作すべく何度も手を加えて曲を仕上げていった" ("King of Ragtime"; p81) ような性格だったとしたなら...?
このような推論は、もちろん私の「空想の産物」なのかもしれませんが、仮に自分がジョプリンだったなら、自身の作品に対しては - この場合、当時の唯一の音楽メディアであった "印刷楽譜 The Musical Sheet" である訳ですが - 正確かつ美しく仕上げられたいと思うのは当然のことのように感じられますし、特に当時はコンピュータや浄書ソフトウエアも無く手書きに頼っていたのみならず、出版社の姿勢感にも作品の質が左右されていたような時代だった訳ですから... ;-) そのような視点で、彼の「印刷楽譜」を眺めて見ますと - 浄書や表紙デザイン、曲想など - 一般に人気のある(作者の力の入った?)曲が、どの出版社からどのような体裁で世に出たか、が関連付けられる気もしてきてなかなかに興味深いですね... いかがでしょうか?
"アラスカン・ラグ The Alaskan Rag"
作曲:ジョセフ・フランシス・ラム Joseph F. Lamb (1959)
はじめに... 謝辞
一般には有名でなくてもラグタイム界では著名な "Big 3:御三家" の一人、作曲者の ジョー・ラム のことを初めに紹介したいのですが、次のサイトを見て頂くのが良いか思います... 英語ですが : Lamb by Wikipedia
20世紀初頭のラグタイム・ブームが終焉した後、ラムは音楽界から離れ一般人として(?)生活を送っていたのですが、いわゆる“ラグタイム・リバイバル”によって「再発見」されると、再びかっての情熱を取り戻してラグタイム作品を作曲しました。しかしこのリバイバルブームも、それらの作品を世に送り続けるほどの力は無く、長らく日の目を見ない状態だったのですが、近年になって娘さんのパトリシアさん Ms. Patricia Lamb Conn や、ピアニストのスーさん Ms. Sue Keller そのほか関係者の尽力により未出版だった曲がリリースされるに至りまして、私もめでたくその楽譜集『A Little Lost Lamb』を入手させて頂くことができました。
楽譜集の冒頭を飾る『アラスカン・ラグ』は、かって一度公表された経緯がありラグタイム界では知られた作品ではあったのですが、私自身は楽譜入手によって初めて念願の編曲が可能となりました。今回の出版に関わった皆様と、この名曲を生み出したラムその人に対し、深謝したく... ;-) ※ 『A Little Lost Lamb』の購入を希望される方は Ragtime Press (英語)にお申込みください。
自分にとっての“新次元”
Tubeにアップするとすぐに海外のラグタイムファンから「ギターに本当によく合っている」とコメントをもらいました... 私もその評価は「本当に嬉しい」ので、その訳は「ギターライクな演奏と同時に、編曲と演奏に(自分なりの) 新次元 を開拓」したい意図があったからです。
左図は冒頭のテーマですが、ここは「2011年 改訂」箇所です ;-)
通常このようなメロディーは<線的に単音ライン>で弾くのでしょうが、ここではあえてアルペジオを用いて残響和音的な印象感をフレーズに与えています。こういう ハープ的演奏表現 に近年は興味がありまして、実は『バッハ リュート作品』の(趣味的)演奏に用いて劇的な効果を満喫しています... 非正統派ですが!
例えばここでも、2小節目1拍目を押さえたまま音を伸ばしつつ3弦のラインに引き継ぐ弾き方を用いていますが、これにより「他声的な聴音感覚」を与えることが可能になります。こういう「解釈」が正しいかどうか?は皆目と分かりませんが「楽しい」のは確かです... 私にとっても&(恐らく)ギターにとっても。
ここは「私流 爆発」でしょうか?! 自分でもこのハーモニクスは大変に気に入っています。
ハーモニクスをガンガン使う というのは、私の『アレンジ・ガイドライン』にも盛り込まれている条項(?)ですが、こういう使い方は結構「イッちゃってる」部類に入ります。
では、どうやってその発想が出たか... それは理屈ではなく「感覚」というか「躾」というか、無意識に浮かぶ、というのが当たっている気がします。天から降ってくる、というか。恐らく「アラスカから降ってきた」のではないでしょうか ;-)
ここでは明らかにガイドラインを越え “新次元” に突入... そんなご大層な話でも無いのですが。通常、私の編曲では「ピアノ原曲から音を減らす」のですが、上図の丸印の音は 増やして 作られたラインです。これも理論的な理由よりむしろ「感性的に求められて」追加したのですが、その感覚はもしかすると“ギター的な流儀”から生じているのかもしれません。
この部分は 演奏解釈 において工夫した箇所で、丸で囲んでいるような3連の音パックを中心に想定して演奏しています... うまく弾けたかは別にしても!
あとは(他の箇所でも用いていますが)スライド・グリスをスラー的な表現に適用させています。複雑な運指になることが多いクラシック・ラグにおいて同じ指で異音を奏することができるこの“ギター的なテクニック”は、もっと用いても良いのかもしれません!
なお YouTube のパフォーマンスでは第四楽節をリピートしていますが、これは 強烈なシンコペーションの連続 が弾いていて楽しかったから、です。この部分も「ギターにマッチした」フレーズに思えたのですが、もっと言うと “Rock Guitar” 的な雰囲気がある気もしておりまして... ;-)
"エンターテイナー The Entertainer"
作曲:スコット・ジョプリン Scott Joplin (1902) : コード展開版 Chordal progression
「バックレス」風のバック(背景) Back lot, like "Backless"
左の写真は、もちろん、イージーなパクリです : LP "バックレス Backless" エリック・クラプトン Eric Clapton の作品で、私が11歳だった 1978年 のリリース...。エレキギターを使った初収録(?)をするにあたり、思い浮かんだのがこのジャケットでした・・・たぶん、購入したアンプ - "Vox mini3" とソファ・室内ランプのセットが、クラプトンのレコードを連想させたのでしょう - 全部、ミニサイズですけど!
(※改めてクラプトンのジャケットを見たら、異常に?大きかったです)
音楽的な「背景」では、この一風変わったラグタイム演奏には、実は別の「イミテーション・インスピレーション」があります... イギリスのコメディ・ドラマ - "ミスター・ビーン Mr. Bean" で、その有名なエンドロールのテーマの中に、アコースティック・ギターのアレンジのものがあるんですが、ご存知でしょうか? (以下のエピソードに収録: "Tee Off" )。※ご興味のある方は YouTube で探してみてください... とまぁ、そんな訳で、この有名なラグタイム曲を色々なアレンジで弾く、というアイディアを検討しています - 過去に「二重奏」のアレンジというのもやっているのですが、投稿が難しそうで気がひけてます・・・ 多重録音・録画して編集すれば可能なのは分かってはいるんですけど!
使用楽器 - エレキ・ギターとアンプ
この Vox mini3 は “人生初アンプ” です... 苦節 35 年?! ちなみに「モデリング」機能は、90年代から嗜んでいまして、著名な "Sans Amp" はかなり初期に購入した記憶があります。にしても、やっぱり「アンプ」の形状をしている、っていうのがイイですね、楽しめます!ということで、上記の「新しいアレンジスタイル」ならエレキギターでも演奏可能だなぁ、と思いついた次に考えたのが「どのギターで、どういう音にするのが(ビデオ的にも)面白いか?」 - と、ここでたぶん「映像的に」先の『バックレス』が脳裏に蘇ったというオチでもあります。 で、ストラトが舞台に登場... ;-) *メーカーは SHECTER JAPAN で、たぶん 1988年製。
さて、音作りの方は、ストラトとコードサウンドのコンビネーションってことで、自ずと決定・・・機材的にも(音楽人生)背景的にも - "米国サザンロック風 American Southern Rock" ですが、まぁ私的なイメージでは "レイラ Layla" 辺りに落ち着きました。なお、この手の演奏スタイルは手馴れてましたから、レコーディングはシンプルに終了 - 文字通りの1テイクです。収録はラインで無く、アンプ出音をマイクで - とは言っても、お馴染みの "ZOOM H2" でありますが。安っぽいアンプのノイズも「古きロック」の雰囲気作りに一役買っております(たぶん)。
ということで、このエピソードを読まれた後に私のビデオを見ると、自ずと“二人のミスター” - "エリック Eric" と "ビーン Bean" を思い出すことになるでしょうね・・・幸か不幸か?!
"エンターテイナー The Entertainer"
作曲:スコット・ジョプリン Scott Joplin (1902) : 普及版 Popular version
はじめに
"最も有名なラグタイム" に間違いなく... ;-) この印象的なメロディーは、ここ・そこ・いたる所 Here, There and EVERYWHERE - テレビCMからショッピングセンター、楽器屋の電子ピアノのデモ演奏にまで氾濫していますが・・・ この普及(?)の直接のきっかけが、これもご存知の映画『スティング』にあるのも、まぁ、間違い無いでしょう。
しかし、ジョプリンの伝記 "ラグタイムの王様 King of Ragtime" には、次のような記述があります: "ラグタイム全盛期にも注目を集めていた"。出版者のジョン・スターク - 単なる宣伝主のみならず、厳しい批評家でもあった彼が綴っていた以下のエピソードも、本書には掲載されています; かって『メープル・リーフ・ラグ』に掲げられた賞賛の多くが、この『エンターテイナー』にもあてはまる。
エピソード : ジェダイの帰還・復讐(復習?) Return of the Jedi... ジェダイとは私で無く“この曲”
【日本註】この著名な映画のタイトル変遷については、ネットでお調べください・・・私の世代には「復讐」ですね。
このバージョンを "普及版" と呼んでるのは、単に 標準チューニング Standard Tuning で弾いているからなのですが... ;-) と、まぁ、それについて、書いてみます。
日本でよく知られているアレンジのひとつが ジム・マクレナン Jim McLennan によるもので、写真の楽譜集 『クラシック・ラグズ・オブ・スコット・ジョプリン』 The Classic Rags of Scott Joplin に掲載されています。もちろん、私のラグタイム経歴も、この楽譜集と彼のアレンジからスタートしたのですが、幸いにも比較的弾きやすいレベルで編曲されているので、最初のラグタイム挑戦にはピッタリかなと思います。
それ以降、自分で編曲し始めると、徐々にジョプリンのピアノ原曲の細かい部分に興味が移っていきました ; 例えばこの曲で言うと、有名なメロディにおける "オクターブのコントラスト Octave-Contrast" です。恐らく技術的な理由からでしょうが、偉大な先達のアレンジでも、この印象的な対比表現がギターに置き換えられることはありませんでした - 当方の知見では、余り例が無かった気がします。
[図01] ピアノ楽譜
* MIDI は Ragtime Betty さん。
私自身このコントラストを実現できないまま、1999年には自分なりの編曲を標準チューニングで済ませていた訳ですが、ある時「何か特別の変則チューニング」を使えば、やれるかもしれない?と思いつきました - ラグタイムに特徴的なベースラインを残し活かす何らかのチューニングを考えれば。熟考の結果、最終的に「進化版 Advanced version 」と呼んでいるアレンジが 2002年に完成、さらに 2010年に一部のチューニングを変更し YouTube への実演アップに至りました。
[図02] 進化版
チューニング: CGCGCE (2010年版),
2002年版では 6弦が D でした。
この(歴史的な?)達成に満足しつつも、何となく「一般的ではないな」と感じていたのも事実です・・・(あまりに特殊なチューニングですから)。ですので、新しい機材で再録アップしようと考えた時には "古いけど親しみやすい" 標準チューニングのバージョンでいこうと決めました。とは言うものの、ここでも「性格」が出まして(?)こう自問してみたり・・・ ; この "オクターブ・コントラスト" を、通常のチューニングで実現できないか? 「進化版」は低音ベースを再現するために5弦をGにしているが、もしこの低音そのものをオクターブ高い3弦開放のG音に置き換えれば、より『ポピュラーな標準チューニング』で、このポピュラーなラグタイムを弾けるのではないか? と・・・。
[図03] 普及版
このベースラインにおいては、自分の「編曲ガイドライン」を逸脱している向きもありますね・・・しかし、ハーモニクスを駆使して、何とか「低いG」を取り込んでいます。
"ポピュラー" と称してはいるものの、全体の印象は「普及に向くレベル」とは言いがたい感じ・・・易しくは無いでしょうから?!しかし、まぁ、この有名なラグタイムを、いつか、どこかで ANYTIME, and ANYWHERE 弾く際に、わざわざチューニングを変更する手間だけは省けたのではないでしょうか・・・。
"メープル・リーフ・ラグ Maple Leaf Rag"
作曲 スコット・ジョプリン Scott Joplin (1899) : パフォーマンス版 Performance version
General information
"メープル・リーフ・ラグ Maple Leaf Rag" (著作権登録 copyright registered 1899年9月18日付) はラグタイム時代・創成期の曲です。作曲者のジョプリン自身にも最初期の作品でありながら、全てのラグタイム作品の中で最も有名、かつ、当時主流だった「1曲単位の楽譜販売」で初めて100万部を売った器楽曲として歴史に名を残しています。 - 引用: Wikipedia.
ラグタイム愛好家には著名な書籍 "ラグタイムの王様 King of Ragtime" 著:エドワード・バーリン博士 Dr. Edward Berlin でも、この曲の解説にまるまる1章を費やしています。もちろん、その価値がある曲なのですが、一方で「まつわる伝説」も数限りないという感じで・・・面白い話が多いですが。そのような混沌の中で、先のバーリン博士は緻密なリサーチの結果、伝説と真実をより分ける偉業を成し遂げています・・・後は、読んでのお楽しみ!(英語ですが)
楽しいエピソード... "なじみの場所に戻る Back in the saddle" ~ ビデオで再び
私が "パフォーマンス版 Performance version" と呼ぶのは“バリエーション演奏”を意識的に取り入れているからですが... ここでは、その話について書いてみます。
イントロ は、もちろん原曲には無いのですが - ここでは別の曲、最近は映画のテーマにも取り上げられている曲を加えています "ベンジャミン・バトン 数奇な人生 The Curious Case of Benjamin Button" の "ベシーナ Bethena"。この曲は実は ラグタイム では無く "コンサート・ワルツ A Concert Waltz" と題され、非常に複雑な音楽的構成を備えています - 特に「和声進行」に関して。それゆえ、この「美しすぎる曲」を(自分基準に従いながら)アレンジするのは、ほとんど諦めていたのですが、ある時「一曲まるまるではなく、部分的にだったら使えるかも?」というアイディアが浮かびました - そう、例えば「イントロ」とか... そこで再び思い浮かんだのが "メープル・リーフ Maple Leaf" がイントロを持っていないという事実;逆に言えば、メープル・リーフの最初の1音(弱起)を「どう弾くか」というのは、なかなかに難しいニュアンスだと感じていた事実が、この「発想リンク」のきっかけになったのかもしれません。
ということで、この美しい「ワルツ」を著名なラグタイムを導く“小さな美しいイントロ”に仕上げるために、調性(キー)を「メープル・リーフ」に合わせる様にアレンジ。また、冒頭で印象的に弾かれる同じフレーズの反復には、聴感上の表現の違いを演出すべく「お得意技の(?)ハーモニクス」を導入しました。
【以下、翻訳未完成】 とりあえず、英語のまま載せておきます...
*you can listen MIDI of the left sample.
Next what may be regarded as the most interested variation will be Brake -
the contrast caused by the sudden stop of whole rhythm section - in this case, brake-stop of Bass notes. Here I omit the weak beat of chord, so what makes more clear the Bass Line, where Joplin might put his talent and innovation. With the kind of respect not only to Joplin but also to Rock music, I let the bass note do the syncopating and braking as if Rock groups often like to do... ;-) Also as performance, I had tried to do "Head Banging" in the video, but might be not going well...
Additionally saying, various harmonics are added, some of what may not be perfectly sounded... and the hat I put on - made in U.S. was bought at the outlet shop of SHIPS, just for the purpose to use in the video as a mocker of old blues man... ;-)
"Pine Apple Rag" by Scott Joplin (1908)
General information
The very famous rag by the very "King of Ragtime", besides now known for the very famous movie "The Sting". Also there is a very famous (among modern ragtime guitarists) and beautiful arrangement by Ton Van Bergeyk, which I ever had enjoyed playing many times!
According to the book "King of Ragtime" by Dr. Edward Berlin, he describes as "Pine apple rag is a good candidate for success, for it is a rousing, rollicking piece", what everyone will agree! So, I had tried to perform with such a vivid live-feeling, rather than a nervous about avoiding playing errors... ;-)
Episodes for fun... to be "Back in the saddle" again on the video.
I'd like to write about "Fashion" this time.
As writing in the comment of video, I would intend to dress in a kind of old fashioned style, like that of Ragtime era - the first decade in the 20th century, or of old Blues man's style. In most of historical photos, ragtimers are usually dressed in a kind of formal style, even if they liked it or not. So I prefered this time one of my most classic suit, in fact having weared only jacket with some accessories. The clothing store who made it is "United Arrows", a popular speciality chain retailer in Japan.
This suit is of "The Sovereign House", who produces most classic men's clothes among his other labels. For example, details in the right photo show some of the ancient tailor's techniques. The fabric is "Supersonik Summer Kid Mohair" by Charles Clayton, which may be made of traditional blend of Wool & Moheia. The shape of jacket also might be classical one - neither so tight nor loose - which makes more comfortable feeling despite of double-breasted shape.
Well... now I just imagine that the wearing variation may give another fun to the video making. So, please wait for my next video, even if I will try another special one or not ;-)