詳細 : ガイドライン... スタイルとビジョンを知るために
いくつかの“典型的なパターン”を紹介しますが、しかしこれらは「ルール」でも無く、またラグタイム・ギター編曲の「最良の方法」でもありません。演奏者によって各々の個性とスタイルがあるべきですし、以下の例も「私のスタイル」を理解する助け、ぐらいの意味合いに感じて頂ければと希望しています... もちろん、ご興味があれば、ですが ;-)
演奏キー(調性)
様々な手法を用いても、原曲のキーを保つ
典型的な事例がコチラです - 前述のページにも書きましたが A フラット - ラグタイムによくあるキー を ドロップG(Gキー)と1F(フレット)へのカポタスト にて実現しています。私の使用しているタブ譜ソフトは(設定によって)実際に出る音で「音符記述」をしてくれるので、オリジナルのピアノ譜と簡単に比較することができます。ちなみに、他の事例としては:
- Bフラット : ドロップG(Gキー)と3Fカポ - または 標準チューニングに1FカポでAキーで演奏
- D & G : ドロップD - このチューニングの5弦開放のA音が、実はGのキーにも役立つのです - 意外にも!
- その他 : 独自のチューニングを使うこともあります- 例えば "CGCGCE" をCのキーに。具体例 "The List of Tabs" にて。
主要なベース音
主要なベース音は優先的に考慮されます
この "メープル・リーフ" のピアノ譜は、「ジョプリン様式」における印象(仮想)的なベースラインの動き、の典型的な事例とも言えましょう。ジョプリンに関する書籍の金字塔である『King of Ragtime』の著者、エドワード・バーリン博士 も、ジョプリンが「ベース音の連続した動き(ライン)」に大変な注意を払っていたという事例を随所に紹介しています。
ということで、編曲の際にも「注意深く扱いたい」と思い、以下のように書き換えています...
この例では、さほど難しくない形でギターへの置き換えに成功していましょうか - 過剰な指の開きや複雑な運指を強いられたりしていませんから... 加えて、アップビート(弱起)のベース(ピアノだと伴奏コード部分)に4弦の開放弦が利用できている点も「アドバンス」になっています。
もちろん1オクターブの上下移動はしないと対応できない訳ですが、基本的には「音名」自体はなるべく変更せずにやっていきたいと考えています。
弱起(アップビート)のベース音は、メロディーラインと和音を成すように選択
上に掲載のピアノ譜をご覧頂くと、ラグタイムのアップビートには2~3音で構成される和音が置かれていることがお分かりになるでしょう - しかし、これを6弦のギターで置き換えるには、1~2音に減らして扱うのはやむを得ないと思われます。その際、私のガイドラインでは、演奏上の弾き易さもさることながら「ハーモニー」の構成に十分な注意を払っています。この楽譜は典型的な事例になりますが、選択された4弦Eフラット音は開放弦で引き易いという点に加え、メロディーを構成するC&Aフラット音と共に和音を構成することが可能になります。ちなみにこのような場合、ギターだとベース音を(記載音長の通り正確に)切ることなく伸ばしっぱなしにした方が自然なように思えますので、開放弦の利点が活かされるケースとも言えましょう。(曲調によっては、スタッカート気味の方が良い場合もありますが)
もちろん、この選択基準には適用が難しいケースも多々ある訳ですが、和声的な視点そのものは常に意識していたいと思っています - なぜなら、ギターにはそもそも6本しか弦が無いため、どうしても音数的な制限の中で楽曲を展開する必要があるからです。しかし逆に、この制限があるからこそ「永遠に続くチャレンジの面白さ」が生まれるのだとも言えましょうか。
その他のテクニック...
ハーモニクスの多用... 好きなので!
ギター特有の表現技法であるハーモニクス - その美しいサウンドが聞く者の耳をひきつけるのですが、それのみならず、演奏にアドバンテージを与えてくれるテクニックでもあるのです。
- サスティン: 自然に減衰するかミュートするまで音が伸び続ける
- 高音発音: 低いポジションのフレットでも高い音を発音可能
左の例は、サスティンに関する典型事例です。メロディのトップE音をハーモニクスで伸ばしながら、大きくポジション移動して低音のベースラインを演奏する、というアイディア - もちろん現実的には、フレーズ間にインターバルが生じてしまいますが。二番目の例に関しては、私のアレンジの中から探してみてくださいませ~ ;-)